根面カリエス(歯の根の部分の虫歯)

院長より
*根面カリエス(Root Caries)とは、歯の根の部分(歯根面)に発生するむし歯のことを指します。一般的なむし歯(う蝕)が歯冠部(歯の上部、エナメル質)に発生するのに対し、根面カリエスは歯の根の表面(象牙質)に直接生じるのが特徴です。高齢者のむし歯の大半が根面カリエスといわれており、特に歯周病や加齢による歯肉退縮が進んだ場合、歯根が露出し、むし歯になりやすくなる傾向があります。根面カリエスは進行が速く、歯髄(歯の神経)に達しやすいため、早期発見と予防が非常に重要です。このページでは、根面カリエスの原因、進行メカニズム、診断方法、治療法、最新の予防策について詳しく解説します。

1. 根面カリエスの特徴と発生メカニズム

① 根面カリエスの特徴

根面カリエスは、象牙質が主な構成成分であるため、通常のむし歯(エナメル質のう蝕)とは異なる特性を持っています。

  • 歯肉が下がった部位に発生しやすい(歯根露出が原因)
  • 象牙質がエナメル質よりも柔らかいため、進行が速い
  • むし歯が浅くても知覚過敏を伴うことが多い
  • 脱灰(酸による溶解)と再石灰化のバランスが崩れると急速に悪化する
  • 進行すると、歯の崩壊が早く、抜歯が必要になることもある

② 根面カリエスの発生メカニズム

根面カリエスの主な発生メカニズムは、歯肉退縮による歯根の露出とプラークの蓄積にあります。

1. 歯肉退縮による歯根の露出

歯周病の進行や加齢、強すぎるブラッシングが原因で歯肉が下がると、象牙質が露出し、根面カリエスのリスクが高まります。

  • 歯根面はエナメル質に比べて酸に弱く、むし歯になりやすい

2. プラーク(細菌)の蓄積

根面はエナメル質よりも滑らかでないため、細菌が付着しやすく、むし歯菌が増殖しやすい環境になります。

  • 歯周ポケットが深いと清掃が不十分になり、プラークが蓄積しやすくなる

2. 根面カリエスの症状と進行段階

根面カリエスの進行に伴い、以下のような症状が現れます。

① 初期症状(脱灰期)

初期の根面カリエスはほとんど痛みを伴いませんが、歯根面に白濁や黄褐色の変色が見られることがあります。

② 進行期(象牙質の崩壊)

むし歯が進行すると、表面がザラザラしてきて、冷たいものや甘いものがしみることがあります。

3. 根面カリエスの診断方法

根面カリエスの診断には、視診・触診・デジタルX線撮影などの方法が用いられます。

  • 視診(歯根面の変色・脱灰の確認)
  • デジタルX線撮影(根面の深部に及ぶカリエスの進行を確認)

4. 根面カリエスの治療法

根面カリエスの進行度に応じて、適切な治療を選択することが重要です。

① 初期段階(脱灰のみ)

  • フッ素塗布(高濃度フッ素ジェルやリカルデント)

② 進行期(象牙質の崩壊)

  • コンポジットレジン修復(CR充填)

5. 根面カリエスの予防策

根面カリエスを予防するためには、適切なブラッシングやフッ素の活用、唾液分泌を促す対策が有効です。

① 適切なブラッシング

  • やわらかめの歯ブラシを使用し、力を入れすぎない

② フッ素の活用

  • 高濃度フッ素ジェル(9000ppm以上)を定期的に使用

③ 唾液分泌を促進

  • キシリトールガムやシュガーレスガムを噛む

④ 定期メインテナンス

  • 歯科医院で3~6ヶ月ごとの定期検診を受ける

6. まとめ ~ 根面カリエスを防ぐために

根面カリエスは、歯肉退縮が進むとリスクが増加します。早期発見とフッ素を活用した予防が重要です。

  • 進行すると治療が困難になり、抜歯が必要になるケースも
  • 定期検診と適切なセルフケアで予防することが最も効果的