
予防・メインテナンス
はじめに ~ 治療よりも予防が重要な理由
歯科医療において、最も大切なのは「悪くなった歯を治すこと」ではなく、「健康な歯をできる限り長く維持すること」です。近年の研究では、むし歯や歯周病は適切な予防策を講じることで高い確率で防ぐことができることが明らかになっています。しかし、日本では「痛くなってから歯科医院に行く」という意識が根強く、歯を失うリスクが高くなっているのが現状です。
- 予防を重視することで、治療の必要がない健康な歯を維持できる
- 定期的なメインテナンスで歯の寿命を延ばし、全身の健康も守ることができる
- 予防の意識が高い国(スウェーデンなど)では、高齢になっても多くの歯が残っている
このページでは、予防歯科の重要性、専門的なメインテナンスの内容、そして長期的に歯を守るための具体的な方法について詳しく解説します。
予防歯科とは? ~ 治療しないための歯科医療
むし歯・歯周病は「予防できる病気」
むし歯や歯周病の発症には、細菌・生活習慣・免疫力などの要因が関係しています。しかし、適切な予防策を実施することで、これらの疾患を未然に防ぐことができます。予防歯科では、以下の点を重視して病気を防ぎます。
- プラークコントロール(歯垢・バイオフィルムの除去)
- リスク評価(唾液検査・歯周病菌検査による個別最適化)
- 食生活指導(糖分摂取の管理、再石灰化を促す食品の摂取)
- フッ素応用(高濃度フッ素による歯質強化)
予防の意識が高い国と低い国の違い
予防歯科の重要性は、歯科先進国のデータからも明らかです。日本では、定期的に歯科検診を受ける人の割合が低く、その結果、高齢になったときの残存歯数が少なくなっています。
国 | 定期検診受診率 | 80歳時点の平均残存歯数 |
---|---|---|
スウェーデン | 約90% | 20本以上 |
アメリカ | 約75% | 17~19本 |
日本 | 約20% | 10~12本 |
このデータからもわかるように、定期的な予防とメインテナンスを行うことで、高齢になっても自分の歯を多く残すことができるのです。
専門的なメインテナンスとは?
プロフェッショナルケアの必要性
自宅でのセルフケアは重要ですが、完全にプラークを除去することは困難です。そこで、歯科医院での専門的なメインテナンスが必要となります。特に、以下のような処置を行うことで、むし歯・歯周病のリスクを最小限に抑えることができます。
GBT(Guided Biofilm Therapy)
最新のメインテナンス技術として注目されているのが「GBT(ガイド付きバイオフィルム療法)」です。従来のクリーニングとは異なり、エアフローを使用した優しい清掃を行うことで、歯や歯肉にダメージを与えることなくプラークを除去します。
- プラーク染色による可視化(除去すべき部位を正確に確認)
- エアフローを用いたバイオフィルムの徹底除去(歯周ポケットの細菌も除去)
- 歯肉への負担が少なく、痛みがほとんどない
GBTは、歯周病予防だけでなく、むし歯予防、インプラントメインテナンス、矯正治療中のケアなどにも適用されます。
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
歯の表面についた細菌や着色を専用の機器で除去する方法です。特に、セルフケアでは除去しきれないプラークや歯石を徹底的に取り除くことができます。
- 歯の着色(ステイン)を除去し、白く健康的な歯を維持
- 歯面をツルツルに仕上げることで、新たなプラークの付着を防ぐ
- 歯周病の進行を抑え、健康な歯肉を維持
長期的に歯を守るために必要なこと
セルフケアの徹底
日々のセルフケアが、むし歯や歯周病の予防において最も重要な要素となります。適切な方法でセルフケアを行うことで、歯科医院でのメインテナンス効果を最大限に引き出すことができます。
- 正しいブラッシング方法(歯ブラシの角度や圧力を適正にする)
- デンタルフロス・歯間ブラシの併用(歯と歯の間の汚れを確実に除去)
- キシリトール・フッ素配合の歯磨き剤を活用
生活習慣の見直し
口腔の健康は、生活習慣とも密接に関係しています。食事の内容や喫煙・飲酒の習慣を見直すことで、歯の寿命をさらに延ばすことが可能です。
- 糖分摂取の管理(砂糖の摂取を減らし、間食の回数を制限)
- 禁煙の推奨(喫煙は歯周病の進行を加速させる)
- ストレス管理(ストレスが強いと食いしばりや歯ぎしりが起こることがある)
まとめ ~ 予防とメインテナンスで生涯健康な歯を
- 予防歯科の意識が高い国では、高齢になっても多くの歯が残っている
- 専門的なメインテナンス(GBT・PMTC)を活用し、むし歯・歯周病を徹底予防
- セルフケアと生活習慣の見直しを行うことで、さらに予防効果を高める
「歯を治す」時代から「歯を守る」時代へ。定期的なメインテナンスと正しい予防習慣を続けることで、一生涯自分の歯で食事を楽しむことができます。