歯科の二大疾患 ~ むし歯(う蝕)と歯周病

院長より
*口腔内の健康を脅かす最も一般的な疾患として、むし歯(う蝕)と歯周病が挙げられます。これらの疾患は、歯の喪失の主な原因であり、全身の健康にも影響を及ぼすことが知られています。むし歯(う蝕)とは、歯質が細菌によって破壊される疾患のことで、歯周病(歯槽膿漏)は、歯を支える組織が炎症を起こし、進行すると歯が抜け落ちる疾患です。これらの疾患は、適切な予防と治療によって進行を抑えることが可能ですが、日本では依然として高い罹患率を示しています。このページでは、むし歯と歯周病のメカニズム・原因・進行過程・最新の治療法と予防策について、専門的な視点から詳しく解説します。

1. むし歯(う蝕)とは?

① むし歯の発生メカニズム

むし歯は、ミュータンス菌をはじめとする口腔内細菌が糖を代謝し、酸を産生することで歯のエナメル質が溶解する(脱灰)現象から始まります。通常、唾液による再石灰化がバランスを保ちますが、脱灰が再石灰化を上回ると、むし歯が進行します。

  • ミュータンス菌が糖を分解 → 酸を生成
  • 酸によって歯の表面(エナメル質)が溶ける(脱灰)
  • 再石灰化が追いつかないと、象牙質・歯髄まで進行

② むし歯の進行度と分類

むし歯は、進行度に応じてC0~C4の5段階に分類されます。

分類 症状と特徴 治療法
C0(初期むし歯) 歯の表面が白濁し、脱灰が進行 フッ素塗布・再石灰化促進
C1(エナメル質う蝕) エナメル質に小さな穴が開くが、痛みなし コンポジットレジン充填
C2(象牙質う蝕) むし歯が象牙質まで進行し、冷たいものがしみる インレー修復(詰め物)
C3(歯髄炎) 神経(歯髄)まで感染し、激しい痛み 根管治療
C4(残根状態) 歯冠が崩壊し、歯根だけが残る 抜歯・インプラントまたはブリッジ

③ むし歯の原因

むし歯の主な原因は、以下の4つの要素が関係する「う蝕の四大要因」によって決まります。

  • 細菌(ミュータンス菌・ラクトバチルス菌)
  • 糖質(砂糖を多く含む食品・飲料)
  • 歯質(エナメル質の強度・唾液の質)
  • 時間(糖を摂取する頻度・口腔内環境)

2. 歯周病とは?

① 歯周病の発生メカニズム

歯周病は、プラーク(歯垢)に含まれる細菌が歯周組織に炎症を引き起こし、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が吸収される疾患です。

  • 歯垢(プラーク)が蓄積 → 歯ぐきの炎症(歯肉炎)
  • 炎症が進行し、歯周ポケットが深くなる
  • 歯槽骨が破壊され、歯が動揺 → 最終的に抜歯が必要

② 歯周病の進行度と分類

歯周病は、進行度に応じて以下のように分類されます。

分類 症状と特徴 治療法
G(歯肉炎) 歯ぐきが赤く腫れる・出血 ブラッシング指導・スケーリング
P1(軽度歯周炎) 歯周ポケットが3~4mm・軽度の骨吸収 SRP(ルートプレーニング)
P2(中等度歯周炎) 歯周ポケット4~6mm・骨吸収進行 歯周外科手術・レーザー治療・再生療法
P3(重度歯周炎) 歯の動揺・骨吸収が著しい 抜歯

3. むし歯と歯周病の共通点と相違点

項目 むし歯(う蝕) 歯周病
原因 細菌(ミュータンス菌)+ 糖 細菌(P. gingivalis など)+ プラーク
発症部位 歯の表面・内部 歯ぐき・歯周組織
症状 痛み・しみる 出血・腫れ・歯の動揺・末期で痛み
予防策 フッ素・シーラント・ブラッシング 歯垢除去・歯間清掃・定期検診
最終的な影響 歯の崩壊・抜歯 歯槽骨吸収・抜歯

4. まとめ ~ むし歯と歯周病を防ぐために

  • 日々のブラッシングとフロスでプラークコントロール
  • 定期的な歯科検診で早期発見・早期治療
  • 適切な食生活と口腔ケアを徹底

むし歯と歯周病を予防し、一生自分の歯を守るためには、早期対応と適切なケアが重要です。