
80歳での残存歯数 ~ スウェーデン、アメリカ、日本の違い(メインテナンス受診率)
院長より

特に、スウェーデンは世界的に見ても「予防歯科先進国」として知られており、高齢者の残存歯数が非常に多い国です。一方、日本では「80歳で20本の歯を残すこと」を目標とした「8020運動」が推進されてきたものの、未だに他国と比較して低い水準にあります。このページでは、スウェーデン・アメリカ・日本の「80歳時点の残存歯数」と「定期メインテナンス受診率」の違いに着目し、なぜこのような差が生まれるのかを詳細に分析します。
1. 80歳時点での平均残存歯数の国際比較
各国における80歳時点での残存歯数の平均値は以下の通りです。
国 | 80歳時点の平均残存歯数 | メインテナンス受診率(成人) |
---|---|---|
スウェーデン | 20~25本 | 80~90% |
アメリカ | 17~20本 | 60~70% |
日本 | 10~15本 | 20~30% |
このデータから、定期的な歯科メインテナンスの受診率が高い国ほど、高齢者の残存歯数が多い傾向にあることが分かります。
2. スウェーデンの予防歯科戦略 ~ 世界トップクラスの口腔健康
① スウェーデンの「予防歯科中心の歯科医療システム」
- 国民の80~90%が定期的に歯科メインテナンスを受診
- 歯科診療報酬制度が「予防」に重点を置いている(成人までは無料、成人は自己責任)
- スウェーデン歯科協会が推奨する「フッ素洗口・セルフケア指導」の徹底
② 「治療より予防」の考え方
- フッ化物(フッ素)応用の普及(歯磨き粉、洗口剤の使用が一般的)
- PMTC(プロフェッショナルクリーニング)の定期受診が義務化
- 歯科衛生士が主導するメインテナンスプログラムの確立
③ スウェーデンの成人のメインテナンス受診率
スウェーデンでは、成人の80~90%が年2回以上の定期検診を受けているというデータがあります。この高い受診率が、80歳時点での高い残存歯数を維持する要因の一つです。
3. アメリカの歯科医療 ~ 保険制度の違いと予防意識の高さ
① 自由診療中心の歯科医療
- 予防メインテナンス(クリーニング・スケーリング)の普及
- フッ素塗布の推奨
- 定期メインテナンスを受けることで、将来的な治療費を削減する考え方
② 80歳時点の残存歯数
アメリカの80歳時点の平均残存歯数は17~20本であり、スウェーデンよりやや少ないものの、日本よりは大幅に多い結果となっています。
4. 日本の現状 ~ 低いメインテナンス受診率が歯の寿命を短くする
① 日本の歯科医療の課題
- 成人の定期メインテナンス受診率が20~30%と低い
- 「痛くなったら歯医者に行く」という意識が根強い
- フッ素応用やPMTCの普及が遅れている
② 日本のメインテナンス受診率の低さ
日本では、歯科受診は「治療目的」が主流で、「予防目的」の定期検診を受ける人は少ないという特徴があります。そのため、むし歯や歯周病が進行しやすく、結果として高齢期に歯を失うリスクが高まります。
5. 日本が目指すべき方向性 ~ 予防歯科の普及と意識改革
① スウェーデン・アメリカの予防歯科から学ぶべき点
- フッ素塗布・フッ素洗口の普及
- GBTメインテナンス(EMSエアフロー)など、低侵襲なクリーニングの推奨
- 歯科衛生士主導のメインテナンス体制の強化
② 日本でも「80歳で20本の歯」を実現するために
定期メインテナンスの受診率を向上させることが、長期的に口腔の健康を維持し、結果的に医療費の削減にもつながることが期待されます。
6. まとめ ~ 80歳時点の残存歯数を増やすために
- スウェーデンは「予防歯科」の成功例であり、80歳でも20本以上の歯を維持
- アメリカは自由診療の影響で、予防メインテナンスの意識が高い
- 日本では、定期メインテナンスの受診率を向上させることが急務
「80歳で自分の歯を残したい」と思うなら、今日から「予防歯科」に取り組むことが重要です。