
メインテナンスの有効性 ~ 長期研究が示すメインテナンスの効果
院長より

1. メインテナンスとは?
メインテナンスの目的
メインテナンスは、歯科医院で行う定期的なクリーニングや検査を指し、むし歯や歯周病の予防を目的としています。
セルフケアでは除去できないバイオフィルムを専門的に除去し、歯の健康を長く保つための重要なケアです。
- むし歯・歯周病の予防(バイオフィルムの除去)
- 治療後の再発防止(特に根管治療・歯周治療後)
- 歯の寿命を延ばし、健康な口腔環境を維持する
日本と海外のメインテナンス受診率の違い
国 | メインテナンス受診率(定期検診を受ける人の割合) | 80歳時点の残存歯数 |
---|---|---|
スウェーデン | 約90% | 20本以上 |
アメリカ | 約75% | 17~19本 |
日本 | 約20% | 10~12本 |
「日本では、痛みが出てから歯科医院に行く人が多いが、スウェーデンでは予防のために通院する文化が根付いている」
2. アクセルソン博士の長期研究が示すメインテナンスの効果
スウェーデンにおける長期研究
スウェーデンのアクセルソン博士(Dr. Per Axelsson)は、歯科予防の分野で世界的に著名な研究者です。
彼の研究では、定期的なメインテナンスを受けている人と受けていない人では、歯の喪失率に大きな差があることが示されています。
アクセルソン博士の研究結果
- 30年以上にわたり、メインテナンスを受け続けた人のむし歯発生率はほぼゼロ
- 歯周病の進行を抑え、80歳時点での残存歯数が平均20本以上
- 定期的なメインテナンスを受けることで、むし歯・歯周病リスクを90%以上低減
「アクセルソン博士の研究は、メインテナンスの有効性を科学的に証明し、世界中の歯科医療に大きな影響を与えた」
3. 最新のメインテナンス技術(プロフェッショナルケア)
GBT(Guided Biofilm Therapy)
- EMSエアフローを使用し、歯面・歯周ポケットのバイオフィルムを効果的に除去
- 痛みが少なく、歯や歯肉に優しいメインテナンス方法
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
- 専用の機器を用いて、歯の表面を徹底クリーニング
- むし歯や歯周病予防だけでなく、歯の着色除去にも効果的
位相差顕微鏡を用いた口腔内細菌の確認
- 患者ごとのリスクに応じた予防プログラムを構築
4. メインテナンスの頻度と推奨プログラム
リスクレベル | メインテナンス頻度 | 推奨されるケア |
---|---|---|
低リスク(歯周病なし・むし歯なし) | 6ヶ月~1年ごと | クリーニングと咬合チェック |
5. メインテナンスを怠った場合のリスク
歯周病の再発
- 歯石やプラークが蓄積し、歯周病が再発する
- 骨吸収が進行し、最終的に歯が抜け落ちる
むし歯の進行
- 初期むし歯を放置すると、根管治療が必要になるケースも
- 小さな異常を早期発見できないと、治療の選択肢が減る
治療費の増加
- 予防のためのメインテナンスは年間3~7万円程度
- 歯を失った場合の治療費(インプラント・ブリッジ)は約50万円以上
「メインテナンスは、将来的な医療費の削減にもつながる」
6. 喫煙の害
喫煙は、歯周病を進行させる強い因子です。ニコチンにより血管が収縮し、歯ぐきの血流が低下することで、菌を貪食するマクロファージなどが歯ぐきに十分供給されず、菌が増えます。さらに、唾液の分泌も減少するため、むし歯のリスクも上がります。加熱式タバコも電子タバコも、リスクは同じです。
また、喫煙者の親をもつ子どもは、非喫煙者の親をもつ子どもと比べて、喘息の発症率が1.6~2倍高いことが分かっています。たとえ子供に副流煙を吸わせていなくても、吸わせている場合とリスクは変わりません。喫煙者の呼気には有害物質が含まれているためです。
7. まとめ ~ メインテナンスを受けることが歯の寿命を決める
- アクセルソン博士の研究が示すように、メインテナンスを受けることで歯を長く守ることが可能
- 定期的なプロフェッショナルケア(GBT・PMTC・細菌管理)が、むし歯・歯周病リスクを大幅に低減
- リスクレベルに応じた適切なメインテナンス頻度を守ることが重要
- メインテナンスを怠ると、歯の喪失や高額な治療費の負担につながる
「歯を失わないために、定期的なメインテナンスを受け、口腔の健康を維持しましょう!」