歯周病と全身疾患の関係 ～ 口腔の健康が全身の健康を左右する理由
院長より
歯周病（歯槽膿漏）は、日本人の成人の約80%が罹患しているとされる疾患であり、歯を失う主な原因のひとつです。しかし、歯周病の影響は口腔内だけにとどまらず、全身の健康にも深刻な影響を及ぼすことが、近年の研究によって明らかになっています。歯周病は、歯を支える歯周組織（歯ぐき・歯槽骨）に慢性的な炎症を引き起こす疾患であり、その原因となる歯周病菌（Porphyromonas gingivalis など）が血流に侵入することで、心血管疾患・糖尿病・誤嚥性肺炎・認知症・骨粗鬆症・早産・関節リウマチなど、多くの全身疾患のリスクを高めることが分かっています。このページでは、歯周病と全身疾患の関連性、歯周病が引き起こすメカニズム、各疾患への影響、最新の研究結果、予防と治療の重要性について、専門的な視点から詳しく解説します。1. 歯周病と全身疾患の関連メカニズム
① 歯周病菌の血流への侵入
歯周病が進行すると、炎症によって歯ぐきの血管が破壊され、歯周病菌が血流に乗って全身へ拡散することがあります。この「菌血症」が、動脈硬化や心血管疾患、糖尿病などを悪化させる要因となります。
- 歯周ポケットから細菌が血管内に侵入
- 血流を介して全身の臓器へ到達し、慢性的な炎症を引き起こす
② 炎症性サイトカインの増加
歯周病の炎症が進行すると、IL-1β、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが大量に分泌され、これが全身の炎症を助長します。
- IL-6 は肝臓に作用し、C反応性タンパク（CRP）の産生を促進 → 動脈硬化の進行を加速
- TNF-α はインスリン抵抗性を高め、糖尿病を悪化
③ 口腔細菌由来の内毒素（LPS）の影響
歯周病菌が産生するリポポリサッカライド（LPS）は、全身の免疫系を活性化し、慢性的な炎症を引き起こすことが知られています。
- 血管内皮細胞の障害 → 動脈硬化を進行させる
- 脳内に到達すると、神経変性疾患（アルツハイマー病）を促進する可能性
2. 歯周病と関連する全身疾患
① 心血管疾患（動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中）
歯周病は、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めることが報告されています。歯周病患者では、血管内にプラーク（動脈硬化巣）が形成されやすく、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高まることが分かっています。
- 歯周病菌が血管内皮を障害し、動脈硬化を促進
- CRP（C反応性タンパク）の増加により、血栓リスクが高まる
② 糖尿病
歯周病と糖尿病は「双方向性の関係」にあることが明らかになっています。
- 糖尿病患者は免疫機能の低下により、歯周病が悪化しやすい
- 歯周病による炎症性サイトカインがインスリン抵抗性を悪化させ、血糖値を上昇させる
③ 誤嚥性肺炎
高齢者の誤嚥性肺炎は、口腔内細菌が気道へ流入することで引き起こされることが多く、歯周病が進行していると発症リスクが高まります。
- 歯周病菌が肺に侵入し、炎症を引き起こす
- 高齢者では、口腔ケアが不十分だと誤嚥リスクが増加
④ 認知症（アルツハイマー病）
近年、歯周病とアルツハイマー病の関連性が注目されています。
- 歯周病菌が血流を介して脳に到達し、アミロイドβの蓄積を促進
- 炎症性サイトカインが脳の神経細胞を傷害し、認知機能を低下させる
3. 歯周病を予防することで全身疾患を防ぐ
① 歯科での定期的なメインテナンス
- 3～6ヶ月ごとの歯科検診とクリーニング
- GBTメインテナンス（EMSエアフロー）によるバイオフィルム除去
② 正しいセルフケア
- フロス・歯間ブラシの使用でプラークを徹底除去
- ナイトガードを使用し、歯ぎしり・食いしばりを防ぐ
③ 糖尿病や生活習慣病の管理
- 血糖コントロールを徹底し、歯周病の進行を抑える
- 栄養バランスの取れた食生活と禁煙が重要
4. まとめ ～ 歯周病予防が健康長寿のカギ
「歯周病が進行している」「全身の健康を守りたい」と感じる方は、ぜひ歯科検診を受け、適切な治療を受けましょう。