歯周組織再生療法 ~ 失われた歯周組織を回復する最先端治療法

院長より
*歯周病が進行すると、歯を支える歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨)が破壊され、最終的には歯の喪失につながります。従来の歯周病治療では、炎症を抑えて進行を止めることが主な目的でしたが、近年の歯科医療の進歩により、「歯周組織再生療法」という歯周組織を再生させる治療法が確立されました。歯周組織再生療法では、歯を支える骨(歯槽骨)や歯根膜の再生が可能、進行した歯周病でも抜歯を回避できる可能性がある、失われた組織を回復し、歯の寿命を延ばすことができるといったメリットがあります。このページでは、歯周組織再生療法の種類、適応症例、治療の流れ、使用する材料、成功率、治療後の管理、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

1. 歯周組織再生療法とは?

歯周組織の構成

歯周組織は、歯を支える4つの重要な組織で構成されています。

  • 歯肉(歯ぐき):外部からの感染を防ぐバリア機能
  • 歯根膜:歯と歯槽骨をつなぐクッションの役割
  • 歯槽骨:歯を支える骨組織
  • セメント質:歯根表面を覆い、歯根膜と結びつく役割

歯周病が進行すると、これらの組織が破壊され、歯がグラついたり抜け落ちるリスクが高まります。

歯周組織再生療法の目的

  • 失われた歯槽骨や歯根膜を再生し、歯の動揺を抑える
  • 歯周ポケットを減少させ、細菌の温床を除去する
  • 歯の寿命を延ばし、抜歯を回避する

2. 歯周組織再生療法の種類と特徴

エムドゲイン®(Emdogain)

  • エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を使用
  • 歯根表面に塗布することで歯根膜や歯槽骨の再生を促進
  • 痛みが少なく、患者の負担が比較的軽い

GTR法(組織誘導再生法)

  • メンブレン(人工膜)を使用し、歯槽骨の再生を促進
  • 歯肉の細胞が歯槽骨の再生を阻害するのを防ぐ
  • 骨欠損が大きいケースに適応

骨移植術

  • 自家骨・人工骨を用いて歯槽骨を増やす
  • インプラントやブリッジ治療前にも応用される

PRF(多血小板フィブリン)療法

  • 患者自身の血液を利用し、組織再生を促進
  • 副作用のリスクが少なく、自然治癒力を高める

3. 歯周組織再生療法の適応症例

中等度~重度の歯周病

  • 歯槽骨の吸収が進行し、歯が動揺している場合
  • 歯周ポケットが深く、通常の歯周病治療では改善が難しいケース

歯周病による骨欠損があるケース

  • 歯槽骨が部分的に失われているが、再生の可能性がある場合
  • 抜歯を避け、歯を保存できる可能性が高い

インプラント治療前の骨造成

  • インプラントを埋入するための骨量が不足している場合
  • 骨移植やGTR法を併用し、骨の再生を促進

4. 歯周組織再生療法の流れ

事前診断

  • レントゲン・CT撮影により、骨欠損の状態を評価
  • 歯周ポケット測定・プロービング検査

手術の準備

  • 歯周病菌を除去し、感染のリスクを最小限にする
  • 抗菌療法を行い、治療効果を高める

歯周組織再生手術

  • エムドゲインやGTR膜を適用
  • 骨移植を行う場合は、人工骨や自家骨を使用
  • 術後は縫合し、再生を待つ

術後管理

  • 抗生物質・消炎鎮痛剤の処方
  • 約1~2週間後に抜糸し、経過観察を行う

5. 治療の成功率と予後管理

  • 成功率は80~90%と高いが、術後のメンテナンスが重要
  • 定期的なクリーニング・歯周病管理が必要
  • セルフケアの徹底(正しいブラッシング・フロスの使用)

適切なアフターケアを行うことで、長期的に歯を保存できる可能性が高まります。

6. 歯周組織再生療法のメリット・デメリット

メリット

  • 抜歯を回避し、天然歯を残すことができる
  • 歯周病の進行を抑え、口腔機能を改善できる
  • 審美性の向上(歯ぐきの改善・健康な歯を維持)

デメリット

  • 自由診療のため、治療費が高額になる
  • 適応症例が限られる(歯槽骨が完全に失われている場合は難しい)
  • 術後のメンテナンスを怠ると、再発のリスクがある

7. 歯周組織再生療法の費用相場

  • エムドゲイン:50,000~150,000円
  • GTR法:100,000~300,000円
  • 骨移植術:150,000~400,000円

長期的な口腔の健康を考えると、再生療法による歯の保存はコストパフォーマンスが高い。

8. まとめ ~ 歯周組織再生療法で歯の寿命を延ばす

  • 歯周組織再生療法は、失われた歯槽骨や歯根膜を再生し、歯を守る治療法
  • エムドゲイン・GTR法・骨移植など、症例に応じた治療が可能
  • 術後のメンテナンスを徹底することで、長期的な成功率を向上できる

歯周病が進行している方でも、適切な治療を受けることで歯を残せる可能性があります。歯周病でお悩みの方は、専門医に相談し、最適な治療を受けましょう。