年齢で歯のリスクは変わる?

院長より
*「年齢によって歯に関するリスクは変化するのか?」というご質問を受けることがあります。まず、虫歯(カリエス)は、免疫があまり強く関与しない疾患で、糖の摂取頻度、唾液の性状・分泌量に左右されます。若くても中高年でも、薬を服用していると唾液の分泌量が減りますので、カリエスリスクが上がります。40代50代以降も、投薬の機会が増えれば、カリエスリスクは上がります。歯周病は、成人の約80%が罹患しているとされ、免疫が強く関与します。20代でも歯周病が進行してきているケースもあります。一般的に、45歳くらいから免疫力が低下してきますので、これ以降に、もともとあった歯周病が急速に進行することが多いです。

年齢とともに変化する口腔リスク

「年齢によって歯に関するリスクは変化しますか?」というご質問を多くいただきます。結論から申し上げると、年齢によって口腔リスクの種類や進行速度は大きく変化することが分かっています。若年層から高齢者まで、それぞれに異なるリスク因子が存在し、それに応じた適切な予防と管理が必要です。

ここでは、虫歯(う蝕)と歯周病という2大疾患を中心に、年齢ごとのリスクの特徴について詳しく解説します。

虫歯のリスクは年齢によってどう変わるか

虫歯は「唾液」と「糖」がカギを握る

虫歯(カリエス)は、主に糖質の摂取頻度唾液の量・質(性状)によってリスクが左右される疾患です。これは、虫歯の発症において免疫の関与が比較的少ないことが理由です。

そのため、若年層でも頻繁に糖を摂取したり、唾液の分泌が少ない状態が続いたりすると、虫歯リスクは高くなります。特にスポーツドリンクや甘い飲料を頻繁に摂取する10代~20代では、慢性的な脱灰が起こりやすくなり、気づかぬうちに虫歯が進行してしまうこともあります。

中高年以降の虫歯リスク

一方で、40代以降の中高年では、服薬による唾液量の低下が虫歯リスクを高める大きな要因になります。高血圧、糖尿病、抗うつ薬、アレルギー治療薬など、多くの薬剤が唾液の分泌を抑制する作用を持っています。唾液は「自浄作用」や「再石灰化」の働きがあるため、その分泌が減ることで虫歯が発生・進行しやすくなるのです。

歯周病リスクの年齢的特徴

歯周病は免疫に深く関係する病気

歯周病は、細菌の感染と免疫反応に起因する慢性炎症性疾患です。一般的には「高齢者の病気」と思われがちですが、近年では20代からすでに進行しているケースも増加しています。

若年者では、思春期性歯肉炎や遺伝性の侵襲性歯周炎などもあり、見逃すと短期間で重度に進行する恐れがあります。成人の約80%が何らかの形で歯周病に罹患しているとされ、無症状のまま進行していることも多く注意が必要です。

免疫力の低下と歯周病の進行

40代後半から50代にかけて、加齢による免疫機能の低下が始まると、これまで進行が緩やかだった歯周病が急速に悪化するケースが多く見られます。とくに45歳を過ぎる頃から、歯槽骨の吸収スピードが加速しやすくなり、歯の動揺、歯ぐきの退縮、さらには抜歯に至ることもあります。

糖尿病、喫煙、ストレス、睡眠不足なども免疫を抑制するため、生活習慣と年齢の両側面から歯周病が進行しやすい状況が整ってしまうのです。

年齢ごとの主な口腔リスクのまとめ

年代 虫歯リスクの特徴 歯周病リスクの特徴
10代~20代 糖分の過剰摂取・清掃不良・酸性飲料などによる初期虫歯 思春期性歯肉炎・遺伝性歯周炎(まれだが進行が速い)
30代~40代 忙しさによるケア不足、早期の唾液分泌低下が始まる 歯周病が静かに進行、免疫力により進行速度に個人差あり
50代以降 多剤服用による唾液量の著しい低下、根面う蝕の増加 加齢による免疫力の低下で歯周病が急速に進行しやすい

年齢に応じた予防と対応が鍵

虫歯も歯周病も、早期の予防と的確な診断・治療によって、進行を止めたり、大きな問題に発展する前にコントロールすることが可能です。

当院では、年齢・生活習慣・持病・服薬状況などを総合的に考慮した上で、患者様ごとのオーダーメイドな予防・治療プランを立案しています。

また、唾液検査歯周病検査(位相差顕微鏡を用いた口腔内細菌の確認)咬合診断を通じて、リスクの高いポイントを可視化し、患者様ご自身にも「自分の口腔状態」を理解していただくことを重視しています。

まとめ

・虫歯は唾液や糖摂取の影響を強く受け、若年層でも中高年でもリスクが存在する
・歯周病は免疫が深く関与し、特に45歳以降に急激に進行することが多い
・多剤服用や生活習慣の乱れが中高年のリスクをさらに高める
・年齢に応じたリスク評価と管理によって、歯の寿命と全身の健康を守ることができる