歯列矯正(歯周治療に付随した矯正治療)~ 歯周病治療のための矯正の意義とアプローチ

院長より
*歯列矯正は単に見た目を整えるものではなく、歯の健康を維持し、歯周組織の長期的な安定を促進する重要な治療手段の一つでもあります。特に、歯周病が進行すると、歯の傾斜や移動が生じ、咬合バランスが崩れることで局所的な過負荷がかかります。これが歯周組織にさらなる負担をかけ、歯周病の進行を加速させる悪循環を引き起こします。
歯周病の治療後に矯正治療を適切に組み合わせることで、歯列の適切な配置を回復し、咬合を安定させることが可能です。これにより、歯槽骨の吸収を抑え、プラークコントロールを容易にし、長期的な歯の保存につながります。歯周病の進行を抑制し、歯の喪失リスクを軽減する、咬合のバランスを整え、歯周組織への負担を軽減する、口腔内の清掃性を向上させ、歯周病の管理を容易にするといったメリットにつながります。この治療アプローチの適応症例や治療ステップ、矯正装置の選択、リスク管理、治療後のメンテナンスについて詳しく解説します。

1. 歯周病と歯列矯正の関係

歯周病が歯列に及ぼす影響

歯周病の進行により、歯槽骨が吸収されると、歯の支持が不安定になります。その結果、歯が傾斜したり、移動したりすることで、咬合バランスが崩れ、特定の部位に過度な負担がかかるようになります。これがさらなる歯周病の進行を招く悪循環を生み出します。

  • 歯槽骨の吸収により、歯の傾斜や移動が発生する
  • 咬合バランスの乱れにより、局所的な過負荷が生じる
  • 清掃困難部位が増加し、プラークや歯石の蓄積を助長する

歯周治療と矯正治療の目的

歯列の適切な位置を回復し、咬合を安定化させることで、歯周病の進行を抑制し、歯の長期保存を可能にすることが目的です。

  • 歯列を整え、清掃しやすい環境を整える
  • 歯の傾斜を矯正し、適切な咬合関係を確立する
  • 歯槽骨や歯周組織への負担を軽減し、機能的な口腔環境を構築する

2. 歯周治療を伴う矯正治療の適応症例

軽度から中等度の歯周病があるが、歯の保存が可能なケース

  • 歯槽骨の吸収が限定的で、歯の動揺が少ない
  • 歯周ポケットのコントロールが可能な状態
  • 歯の傾斜を矯正し、咬合バランスを改善できる

歯の移動によって咬合改善が可能なケース

  • 局所的な咬合負担の軽減が期待できる
  • 清掃性を高めるために歯列の調整が必要
  • 補綴治療の適合性向上のために歯の移動が必要

インプラントや補綴治療を計画しているが、事前に歯列調整が必要なケース

  • インプラント埋入部位の確保のために矯正的移動が必要
  • ブリッジやクラウンの適合を向上させるための咬合調整
  • 隣在歯の傾斜を修正し、補綴物の適合精度を向上

3. 歯周治療と矯正治療のステップ

歯周病の状態を評価

  • 歯周ポケットの深さ・歯槽骨の状態を精密診断
  • CT・レントゲンを用いた歯根および歯槽骨の詳細評価

歯周病のコントロール(非外科的治療)

  • スケーリング・ルートプレーニングによる歯石の除去
  • 抗菌療法やフラップ手術による歯周病の進行抑制

矯正治療の開始

  • 矯正力を最小限に抑え、歯周組織への影響を最小化
  • 咬合改善により、歯周病の管理を容易にする

矯正後の歯周病メンテナンス

  • リテーナーの装着による歯列の維持
  • 定期的な歯周病管理とプロフェッショナルクリーニング

4. 歯周病患者に適した矯正装置

マウスピース矯正(インビザライン)

  • ワイヤーを使用しないため、清掃性が高い
  • 過度な矯正力を回避し、歯周組織への負担を軽減

セルフライゲーションブラケット

  • 摩擦を抑えた設計により、歯の移動を効率化

5. 矯正治療中のリスクと注意点

矯正中の歯周病悪化リスク

  • プラーク蓄積のリスク増加
  • 矯正装置周囲の清掃徹底が必要

歯槽骨が不足している場合のリスク

  • 歯の移動に伴う骨吸収の進行
  • CTでの骨量評価と矯正計画の適正化が必須

6. 矯正治療後のメンテナンス

  • リテーナーの適切な装着
  • 定期的な歯周病チェック
  • フロス・歯間ブラシの活用によるプラークコントロール

7. まとめ ~ 歯周治療と矯正治療を組み合わせることで、長期的な歯の健康を実現

  • 歯周病による歯の傾斜や歯列不正を矯正で改善
  • 咬合を適正化し、歯周組織への負担を軽減
  • 長期的な口腔健康の維持

「歯周病治療と矯正治療を組み合わせることで、歯の寿命を延ばすことが可能です。」
専門医と相談し、最適な治療を受けましょう。