
歯周組織の構造について ~ 役割と重要性

歯周組織とは? ~ 4つの主要構造
歯周組織は、歯の支持構造を維持し、正常な咬合機能を保つために重要な役割を担います。各組織が相互に関与しながら、歯を健康に保ち、噛む力を適切に分散する機能を果たしています。
歯肉(Gingiva)~ 歯を保護するバリア機能
歯肉は歯を取り囲み、外部の刺激や細菌感染から歯周組織を守るバリアとして機能します。歯肉には大きく分けて2つの部分があります。
- 役割:歯周病原細菌から歯を保護し、細菌の侵入を防ぐ
- 構造:角化上皮を持ち、炎症を抑える機能がある
- 血流が豊富で、歯と歯ぐきの境目の溝(歯肉溝)から白血球や抗体を分泌している
遊離歯肉(Free Gingiva)
遊離歯肉は歯の周囲にあり、歯に密着しているが骨には付着していない部分です。歯肉溝(Gingival Sulcus)が存在し、健康な状態では1~3mmの深さを持ちますが、歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、炎症が起こります。
- 歯の周囲にあり、骨には付着していない
- 健康な状態では1~3mmの歯肉溝を持つ
- 歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、炎症を引き起こす
付着歯肉(Attached Gingiva)
付着歯肉は歯槽骨に直接付着しており、咀嚼やブラッシングによる機械的刺激に対して耐久性を持つ部分です。炎症に強い角化上皮で覆われているため、健康な口腔環境を維持するために重要な役割を果たします。
- 歯槽骨に付着しており、外部の刺激に対して強い耐性を持つ
- 角化上皮で覆われており、炎症に強い
- ブラッシングや咀嚼時の機械的刺激に耐える役割
歯根膜(Periodontal Ligament)~ クッション機能を持つ組織
歯根膜は、歯と歯槽骨をつなぐ繊維性の組織で、歯が適切に動くためのクッションの役割を果たします。咬合時の力を分散し、強い衝撃から歯を守る重要な構造です。
- 役割:歯を歯槽骨に固定し、咬合力を分散する
- 構造:コラーゲン繊維で構成され、強い弾力性を持つ
- 知覚神経を持ち、咬合圧を感知する機能がある
歯根膜の厚さは0.15~0.38mmと非常に薄い組織ですが、歯を支える役割として非常に重要です。加齢とともに減少しやすく、歯周病が進行すると歯根膜が破壊されるため、注意が必要です。
歯槽骨(Alveolar Bone)~ 歯を支える骨組織
歯槽骨は、歯を支える顎骨の一部であり、歯の抜歯後に吸収されやすい特徴があります。健康な状態では、歯根の周囲に密着し、歯根膜を介して適度な弾力性を持つことで、咬合力を適切に分散します。
- 役割:歯を支え、咬合圧を受け止める
- 構造:緻密骨と海綿骨で構成され、再生能力を持つ
- 歯根膜を介して歯と連携し、動的な適応をする
歯槽骨の吸収が進むと、歯の動揺が生じ、最終的には抜歯に至る可能性があります。
セメント質(Cementum)~ 歯根を保護し、歯根膜と結合
セメント質は、歯根を覆う組織であり、歯根膜の繊維と結合し、歯槽骨との安定した関係を維持します。歯周病が進行すると、このセメント質が破壊され、歯根が露出することで知覚過敏が生じることがあります。
- 役割:歯根を覆い、歯根膜と結合する
- 構造:無血管性の組織で、再生能力を持つ
- 加齢とともに厚くなり、歯の動揺を抑える役割がある
セメント質が露出すると、冷たいものがしみる知覚過敏の症状が現れるため、適切なオーラルケアを行うことが大切です。歯周病が進行した場合、歯周再生治療(エムドゲイン・骨補填材)によって修復が可能です。
歯周組織と歯周病の関係
歯周病(Periodontal Disease)は、歯周組織が炎症を起こし、最終的に歯を支える機能が失われる疾患です。
- 歯肉炎(Gingivitis):歯肉の炎症のみ(可逆的)
- 軽度歯周炎(Mild Periodontitis):歯根膜や歯槽骨の初期破壊
- 中等度歯周炎(Moderate Periodontitis):歯槽骨の吸収が進行
- 重度歯周炎(Severe Periodontitis):歯が動揺し、最終的に喪失
まとめ ~ 歯周組織を守ることが歯の寿命を延ばす
- 歯周組織は「歯肉」「歯根膜」「歯槽骨」「セメント質」の4つで構成される
- 歯周病の進行によって、歯を支える機能が失われる
- 適切なケアと専門的な治療で、歯周組織を健康に保つことが可能
「歯を失わないためには、歯周組織の健康維持が不可欠」
毎日のセルフケアと定期的な歯科検診を通じて、歯周組織を守り、健康な歯を維持しましょう!